オリオン税理士法人
法人税

簡易課税と控除対象外消費税等の関係性


(1) はじめに

課税売上高が5億円を超える場合又は課税売上割合が95%未満になる場合、「個別対応方式」又は「一括比例配分方式」のいずれかの方式により消費税の申告をします。

上記方式で消費税の計算をした場合、仕入れに係る消費税額は、全額を仕入税額控除として控除できないケースが生じます。控除ができなかった消費税は「控除対象外消費税額等」として会計上の費用になります。

一方、法人税の申告上は控除対象外消費税額等をその事業年度において全額を損金算入できない場合があります。



(2) 控除対象外消費税額等を全額損金算入できない場合とは

法人税の申告上、下記要件に該当する場合には控除対象外消費税額等として計算された金額を「繰延消費税額等」として資産計上します。

① 会計処理として税抜経理を採用していること

② その事業年度の課税売上割合が80%未満であること

③ 控除対象外消費税額等のうち、棚卸資産に係るものではないこと

④ 一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円以上であること



(3) 繰延消費税額等の損金算入の方法

上記の判定により、控除対象外消費税額等が繰延消費税額等に該当する場合、下記方法で計算された金額を各事業年度の損金に算入します。

① 繰延消費税額等が生じた事業年度

繰延消費税額等としてその全額を資産計上した上で、これを60で除し、その事業年度の月数を乗じた金額の2分の1に相当する金額につき損金経理した金額

② 翌事業年度以降

当初生じた繰延消費税額等の額を60で除し、その事業年度の月数を乗じた金額につき損金経理した金額



(4) 簡易課税を適用している場合には要注意

消費税の申告において簡易課税制度を選択かつ税抜経理を採用している場合にも、消費税の申告とは別に控除対象外消費税額等が繰延消費税額等に該当するかの判定が必要です。

繰延消費税額等はあくまでも法人税法上の規定ですので、消費税申告において課税売上割合の影響を受けない場合にも損金算入が制限されることがあります。



(5) まとめ

その事業年度の課税売上割合が80%未満かつ控除対象外消費税額等が20万円以上という要件を満たす会社はかなり限られますが、例えば不動産会社が投資用物件を購入した場合等がこれに該当し、一般的には取引規模が大きくなるため、課税所得に与える影響も大きくなります。

簡易課税を選択している場合、課税売上割合を意識しないことが多いと思いますので十分にお気を付け下さい。


(HIPON)

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