在職老齢年金の支給停止調整額の引き上げが行われると、給与収入を得つつ従来よりも多くの
年金を受け取る者が増えることが予想されます。
このことを踏まえ税負担の公平性の観点より、給与所得控除と公的年金等控除の合計額の上限を
280万円とすることが令和7年度税制改正大綱に記載されました。
※令和8年度税制改正において法制化を行う見通し
〈給与所得・公的年金等控除額の合計額の上限が280万円とされた理由〉
下記2点を考慮した結果
・公的年金収入が増加する者には年金収入の増加と併せて手取りが減少しない範囲内
・年金収入に変化がない者については控除上限額の改定により影響が生じないよう考慮
仮に収入1300万円・年齢65歳以上とし、以下3パターンで所得控除後の所得金額がどれくらいに
なるか試算してみました。
①給与収入のみ
②公的年金等収入のみ
③給与収入1000万円+公的年金等収入300万
〈改正前〉
給与収入 (A) | 給与所得控除 (B) | 公的年金等 収入(C) | 公的年金等 控除(D) | 所得金額 (A-B+C-D) | |
①給与のみ | 1300万円 | 195万円 | – | – | 1105万円 |
②公的年金等 のみ | – | – | 1300万円 | 195.5万円 | 1104.5万円 |
③給与+ 公的年金等 | 1000万円 | 195万円 | 300万円 | 110万円 | 995万円 |
③給与収入1000万円+公的年金等収入300万円の場合、①給与のみの場合・②公的年金等のみの場合と
比較し所得金額が約110万円安くなっていることがわかります。
〈改正後〉
給与収入 (A) | 給与所得控除 (B) | 公的年金等 収入(C) | 公的年金等 控除(D) | 所得金額 (A-B+C-D) | |
①給与のみ | 1300万円 | 195万円 | – | – | 1105万円 |
②公的年金等 のみ | – | – | 1300万円 | 195.5万円 | 1104.5万円 |
③給与+ 公的年金等 | 1000万円 | 195万円 | 300万円 | 85万円 | 1020万円 |
※③給与収入1000万円+公的年金等収入300万円の場合において、所得控除の合計が280万円となる
よう、公的年金等控除額を調整しています。
改正前に比べ、改正後は所得金額の差が狭まっていることが分かります。
これにより、所得金額をもとに算出される所得税額の差も改正前より小さくなると予想されます。
(sugi)