フリーレント契約とは、賃貸借契約開始後の一定期間において、借主側が賃料を支払わずに入居できる特約のことをいいます。
貸主側にとって、その期間中の賃料収入を得られず、短期的な収入が減少する点や実質利回りの低下などのデメリットが想定されます。しかしながら、フリーレント期間を設定することで入居希望者を増やし、空室期間を短縮できるほか、家賃を下げずに競争力を確保できます。さらに、長期契約の獲得や優良テナントの確保につながり、結果的には安定した収入と物件価値の向上が期待できるため、多くの貸主がフリーレント契約を採用しています。
借主側にとってもフリーレント契約は大きなメリットがあります。まず、その期間中の賃料負担がなくなるため、初期費用や移転コストを大幅に軽減でき、資金繰りの安定につながります。また、移転の準備期間を、賃料を気にせずに確保できたり、長期契約や高額物件でもフリーレント契約を交渉材料にできるため、実質的な賃料負担を抑えつつ優良物件への入居が容易になります。このように、借主側にとって、非常に有利な条件と言えます。
フリーレント期間は、借主側は、賃料を支払わないため会計処理が不要になるのか・・実際は役務の提供を受けているため未払計上するのか疑問が生じるかと考えられますが、会計処理方法は2つあります
①フリーレント期間は仕訳しない
フリーレント期間は費用計上しないで、実際の支払時に支払額で計上を行う方法です。
消費税も実際の支払時に課税仕入れとして計上します。
中小企業においては、ほぼほぼこちらを選択しているかと想定されます。
②賃料等の総額を契約期間の月数で均等に按分する方法
フリーレント期間中でも現実的には物件を使用しているという発生主義の観点から賃料等の総額を契約期間の月数で均等に按分し、按分後の金額を月額費用とみなして毎月費用計上を行う方法です。
注意点としては、すべてのフリーレント契約が②の対象になるわけではありません。
課税上の弊害がある下記の場合には、適用できません。
・フリーレント契約ありの場合とない場合での賃料総額の差が20%を超えるような場合
・無償期間が長く、事業年度の半分以上が支払ゼロ又は少額の場合
このようなケースでは、①で計上することになります。
令和7年度税制改正において、法人税基本通達12の5-3-2「無償等賃借期間を含む賃貸借取引に係る支払額の損金算入」が新設されました。
この改正により、上記の課税上の弊害がある契約以外であれば、賃料総額を賃借期間で按分した金額を損金算入することが認められるようになりました。
この改正は、新リース会計基準の考え方に合わせるために新設されたものですが、新リース会計基準を適用しない中小企業等であっても②の方法による処理が認められています。
適用は、令和7年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税からとなります。
フリーレント契約は、借主側にとって大きなメリットがあります。しかし、新リース会計基準の対象となる上場企業や会計監査人を置く企業では、賃料総額を賃借期間で按分した金額を損金算入することが認められるようになりましたが、強制になるので注意が必要です。
ビッキー