オリオン税理士法人
その他税目

道府県民税利子割をめぐる制度改正


1.制度の概要(これまでの仕組み)

 道府県民税利子割は、預貯金等の利子に対して課される地方税であり、個人住民税の一部を構成する税目の一つです。本来、個人住民税は「納税義務者の住所地」を課税の基準とする、いわゆる住所地課税が原則とされています。
 しかし、利子割については、制度創設当時の考え方に基づき、預貯金口座の所在する金融機関の営業所等所在地の都道府県が課税団体となるという、住所地課税の例外的な仕組みが採用されてきました。この背景には、かつては預金者の住所地と口座所在地が概ね一致していた、という前提がありました。

 

2.現状(ネット銀行の普及による変化)

 近年、インターネット銀行の利用が急速に拡大しています。これらの銀行は、実店舗をほとんど、あるいは全く持たず、本店所在地のみで全国の口座を管理しているケースが多く見られます。
 その結果、利子割は預金者の住所地にかかわらず、銀行本店所在地の都道府県に納入される(特に一部の都道府県に利子割税収が大きく集中する)構造が生じるようになりました。実際、東京都などでは、利子割税収のシェアが他の個人住民税項目と比べて著しく高い水準で推移しています。

 

3.問題点(制度と実態の乖離)

 このような状況について、次のような問題点が指摘されてきました。

 ・個人住民税の基本原則である住所地課税との不整合
 ・実際に住民サービスを提供している都道府県に税収が帰属しない不公平感
 ・ネット銀行の利用拡大という経済社会の変化に制度が追いついていない点

 一方で、利子割の課税方式そのものを「住所地課税」に改める場合、金融機関に過度な事務負担が生じること、個人情報管理やシステム対応の困難さ、所得税を含めた利子課税全体との整合性、といった実務上の課題も大きく、直ちに制度を抜本的に改めることは困難とされてきました。

 

4.改正要望(これまでの検討の方向性)

 こうした中、地方財政審議会等では、課税方式は当面維持しつつ税収の帰属のみを調整することで住所地課税の考え方に近づけるという、現実的な対応策が検討されてきました。
 その具体策として提言されたのが、都道府県間で利子割税収を再配分する「清算制度」の導入です。これは、制度の根幹を大きく変えずに、税収偏在の是正を図る折衷案といえます。
 参照https://www.soumu.go.jp/main_content/001042259.pdf

 

5.今回の改正(令和8年度税制改正大綱)

 令和8年度税制改正大綱では、これらの検討を踏まえ、道府県民税利子割に清算制度を導入することが明記されました。改正の主な内容は次のとおりです。

 ・各都道府県は、いったん納入された利子割税収から徴収取扱費を控除した残額を対象に、都道府県ごとの「清算基準額」に応じて税収を按分
 ・他の都道府県に帰属すべき金額を相互に支払・相殺する仕組み

 清算基準額は、当該都道府県内に住所を有する個人に係る所得金額を基礎とし、直近3年分の平均値
を用いて算定されます。
 これにより、課税事務や金融機関の負担を増やすことなく税収帰属を住所地ベースに近づけるという対応が図られることになります。
 参照https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20251226taikou.pdf P34

 

 今回の改正は、ネット銀行の普及という時代の変化に対応しつつ、地方税の基本原則である公平性を確保するための重要な一歩といえます。今後は、具体的な施行時期や実務運用、都道府県財政への影響などについて、引き続き注視していく必要があると思われます。

 (小林)

お使いのブラウザーはこのサイトの表示に対応していません。より安全な最新のブラウザーをご利用ください。