オリオン税理士法人
法人税

業績連動給与と執行役員


上場会社等では、業績連動型給与を導入している会社が多数見受けられますす。

業績連動型給与とは、業務執行役員に対して利益や株価等の指標を基礎として算定される額を金銭や株式等で支給する給与をいいます。

業務執行役員に対してインセンティブを与えることで、企業の成長を促すのに効果的な方法として採用されているもので、法人税法上も当該給与について一定の要件を満たすことで損金処理することが可能となります(法法34⑤)。

ところで、法人税法上の業務執行役員とは、取締役会設置会社の取締役(会法363➀)、指名委員会等設置会社の執行役(会法418)、又はこれらに準ずる者(法人税法上のみなし役員等)をいいます(法令69⑥)。

そこで、上場企業等において執行役員制度を設けている場合の、執行役員の取扱いはどのようになるでしょうか?
執行役員は、その肩書は役員と付されていますが会社法上の執行役とは異なり(会法329➀)、コーポレートガバナンス等の点から業務執行機能と監督機能を分離しようとする目的で導入されたもので、会社法上の設置根拠があるわけではありません。

法人税法上も、執行役員についての明記はなく、原則としては使用人としての取扱いになるものと思われます。

その場合、業績連動型給与の損金計上の時期として、執行役員に対する損金のタイミングはどの時点になるでしょうか?
本来、業務執行役員に対する業績連動型給与の損金計上の時期は「定時株主総会により計算書類が承認された日をいいます(法基通9-2-20)」が

執行役員は、税法上の役員に該当しないため使用人としての決算賞与(法令72の3)のタイミングに合わせた損金処理とするべきか、業績連動型給与の損金のタイミングに合わせるか判断に迷います。

これに関しては、執行役員が会社との関係で「雇用契約」を維持しているのか、或いは「委任契約」を締結しているかにより判断が異なるものと思われます。

雇用契約のままであれば、使用人に対する決算賞与の取扱いとなり、委任契約であれば業績連動型給与と同一の時期に損金処理となるものと思われます。

これは、執行役員は前述のとおり、会社法上の役員ではありません。そのため、執行役員が雇用契約のままであれば、会社法上規定されている役員報酬の総会決議(会法361➀)や定款への記載を要することもありませんので、使用人としての決算賞与の取扱いに従えばよいと考えます。

一方で、執行役員が委任契約を締結しているような場合は、業績連動型給与の支給を株主総会の承認を要件とすることについて定款で定めている、或いは当該執行役員とその旨を委任契約で締結している場合は、総会の承認日に損金処理になるものと思われます。

最後に、あくまで執行役員は会社法上も法人税法上も役員とはなりませんので、みなし役員等に該当しない限りは役員に対する過大給与等(法法34②)の問題もありません。また、業績連動型給与が業務執行役員の損金要件を満たさないような場合であっても、使用人としての支給要件を満たす限りは損金処理が可能になるものと考えます。

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