令和3年4月21日、所有者不明土地問題を解決するための法律(「民法等の一部を改正する法律案」及び「相続等により取得した土地の所有権の国庫への帰属に関する法律案」)が参議院本会議で可決成立しました。
総務省
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00049.html
改正等が盛りだくさんですが、主なものは以下の通りです。
Ⅰ.相続登記の義務化
①相続または遺贈により不動産を取得し、取得を知った日から3年以内に登記をしない場合10万円以下の過料の対象となる。
②遺産分割がまとまらず相続登記できない場合には、相続人であることを申告をすれば相続登記をする義務は免れる。
この場合、法務局が登記簿に申告をした者の氏名住所などを記録する(相続人申告登記(仮称))
その申告後の遺産分割協議によって不動産の所有権を取得したときは、遺産分割の日から3年以内に登記しなければならない義務が発生する。
③法改正後に発生した相続だけでなく、法改正以前から相続登記をしていない不動産についても義務化の適用がある。
④登記申請期限は、「施行日から3年以内」または「相続により不動産の取得を知った日から3年以内」となる。
仮に相続人が把握していない被相続人の不動産があった場合、その存在を知ってから3年以内に登記すれば良いことになる。
⑤法施行日は令和6年中となる予定
Ⅱ.不動産住所変更登記の義務化
①個人・法人が住所・氏名・名称変更した場合における不動産住所氏名変更登記が義務化され、2年以内に手続きをしなければ5万円以下の過料の対象になる。
②法改正以前から住所変更登記をしていない不動産についても義務化の適用がある。
個人が所有する不動産は、購入前の住所で登記し売却時に住所変更する人が多いため、施行日後は注意する必要がある。
③個人は法務局に生年月日等の「検索用情報(謄本には記載されない)」の申出を行う。
また法施行日後は法務局が住基ネットにより住所変更を把握した場合は、個人に確認をとった上で変更の登記をすることが可能となる場合もある。
④法施行日は令和8年中となる予定
Ⅲ.相続等により取得した土地所有権を国庫に帰属させる制度の創設
①相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により取得した土地を手放して、国庫に帰属させることを可能とする制度を創設。
②一定の要件(詳細は政省令で規定)を設定し、法務大臣が要件を審査する。
建物や通常の管理又は処分を阻害する工作物等がある土地、土壌汚染や埋設物がある土地、崖がある土地など以外の土地に限る。
③審査手数料のほか、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金を徴収する。
宅地200㎡で80万程度が標準
④法施行日は令和5年中となる予定
Ⅳ.所有不動産の一覧情報(所有不動産記録証明書(仮称))の発行
①本人または相続人が、所有している不動産の一覧情報を法務局に対して交付請求できるようになる。
名寄帳の全国版・課税明細書に未記載のものも載る予定
②利用開始可能日は不明
国としては所有者不明土地をなくそうと過料や制度設計に勤しんでいますが、鞭だけでなく飴も必要かと思います。
例えば住所変更登記に必要な住民票発行手数料を無料にする等があればいいなあと個人的に思いました。
その他にも改正等がありますので詳しくは下記を参照してください。
http://www.moj.go.jp/content/001347356.pdf
(小林)