取得費及び取得の時期の概要
取得費
- 相続や贈与によって取得した不動産については、被相続人(亡くなった人)や、贈与した人がその土地建物を購入した時の購入代金や購入手数料等を引継ぐことができます。
- 相続や贈与によって相続人や受贈者が支払った名義変更手続きのための登記費用や不動産取得税等についても取得費に加算することができます。
- 取得費が不明の場合等については、譲渡代金の5%を取得費とすることができます。
取得の時期
- 相続や贈与により取得した時は、被相続人(死亡した人)や、贈与した人の取得の時期を、取得者が引継ぐことになります。
- 相続や贈与により取得した不動産を売却する場合には、被相続人や贈与者の取得の時から譲渡までの所有期間をもって長期か短期かを判定することになります。
相続税の取得費加算の概要と適用要件
相続税の取得費加算の特例とは、相続した不動産等を一定の期間内に売却した場合に、相続税の一定額を売却資産の取得費に加算することができる特例です。
取得費加算の要件
- 相続や遺贈により財産を取得した人が売却をしている
- その財産を取得した人に相続税が課税されている
- その財産を、相続開始の翌日から3年10カ月以内に売却している
計算式
確定申告添付書類
確定申告に必要な書類です。
空家に係る譲渡所得の特別控除の概要と適用要件
現在、空家の増加が社会問題になっていることから、亡くなった人(以下、「被相続人」という)が亡くなる直前まで居住していた家屋(マンション等の区分所有建物を除く)で一定の要件を満たした場合には、売却により譲渡所得が発生した際に3,000万円特別控除を適用できる措置があります。令和6年1月1日以降の譲渡においては、対象不動産を相続した者が二人以下の場合は一人当たり3,000万円の特別控除となり、三人以上の場合には、一人当たり2,000万円の特別控除となります。なお、相続税の取得費加算とは選択適用となります。
下記チェック項目が全てYesであれば、3,000万円特別控除の対象になります。
- 被相続人が亡くなる直前まで居住していた家屋(マンション等の区分所有建物を除く)である。
ただし、被相続人が老人ホーム等に入所したことにより相続開始において空き家となっていた場合には、以下の要件に該当する場合は特例適用が可能となる。- 被相続人が、介護保険法に規定する要介護認定や要支援認定等を受けており、
かつ相続開始の直前まで老人ホーム等に入所していたこと
(入所時点で要介護・要支援認定の状況にあること) - 被相続人が老人ホーム等に入所した時から相続開始直前まで、被相続人が一定の使用をし、かつ事業の用、貸付の用、被相続人以外の居住の用に供されていたことがないこと
- 被相続人が、介護保険法に規定する要介護認定や要支援認定等を受けており、
- 亡くなる直前において被相続人以外に居住している者がいなかった
- 当該相続の時から譲渡の時まで事業用、貸付用または居住の用に供されていない
- 譲渡前に、地震に対する安全性に係る規定またはこれに準ずる基準に適合するものである、
または譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに売買契約等に基づき買主が耐震工事を実施
(下記、5の要件との何れか選択) - 建物を取壊して譲渡する場合は、取壊してから1年以内の譲渡である、または譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに売買契約等に基づき買主が家屋を取壊す(上記、4の要件との何れか選択)
- 地方公共団体等が、上記1から5の規定に適合する旨を確認したことを証する書類を添付している
- 当該家屋は、昭和56年5月31日以前に建てられた家屋である
- 令和9年12月31日までの譲渡である
- 亡くなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡である
- 譲渡代金が1億円以下である
※上記の青字は、令和6年1月1日以降に行う譲渡について適用されます。
計算事例
Q.
Aさんの母親が令和3年5月に亡くなり、Aさんの母親が1人暮らしをしていた自宅(昭和55年取得)を令和6年3月に相続し、相続税を1千万円支払いました。空家のままにしておくと近所の治安も悪くなると思い令和6年9月に6千万円で売却をしました。所得税はいくらでしょうか?なお、相続税の取得費加算や特別控除の適用要件はすべて満たしているものとします。
- Aさんが相続した課税財産のうち、自宅評価は4千万円、債務控除前の課税価格は1億円です。
- 自宅の取得費については不明です。
A.
(1)相続税の取得費加算
- 取得費
6,000万円×5%=300万円(取得費不明により売却代金の5%) - 加算相続税
1,000万円×4,000万円/10,000万円=400万円 - 税額計算
{6,000万円-(300万円+400万円)}×15.315%=811.69万円
(2)3,000万円特別控除
- 税額計算
(6,000万円-300万円-3,000万円)×15.315%=413.50万円
(3)税額判定
(1)>(2) 特別控除の方が有利のため 413.50万円