一般社団法人を設立した場合、一般社団法人で所有する財産については未来永劫、「相続税や贈与税が課税されない」というお話を耳にされた方もいるかもしれません。これは、一般社団法人は設立時に出資金を必要とせず、また社員※への剰余金や残余財産の分配が禁止されている等から、税法上も「出資持分がない」と理解されているためです。そのため、これまでは一般社団法人で収益不動産を購入し、その収益を内部留保したとしても一般社団法人で有する財産については相続税や贈与税が課税されていませんでした。
ただし、平成30年度税制改正により、一定の制限が加えられることになりました。
※社員:法人の構成員のことであり、株式会社の株主に相当する人のことをいいます。
機関等 | 一般社団法人 |
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社員 | 1名以上 (設立時は2名以上) |
理事 | 1名以上 (理事会設置会社の場合は3名以上) |
監事 | 不要 (理事会設置会社の場合は1名以上) |
基金※ | 不要 (利用可能) |
※基金:社員や社員以外の人から拠出してもらう会社の基礎財産になるものです。出資とは異なり、一定の要件や合意のもと拠出者に返還義務を要します。
平成30年度税制改正の内容
改正点
一般社団法人等の理事である者(当該一般社団法人等の理事でなくなった日から5年経過していない者を含む)が死亡した場合において、当該一般社団法人等が下記に掲げる要件の何れかを満たす場合(特定一般社団法人等という)、その死亡した者(被相続人)の相続開始時における当該特定一般社団法人等の純資産額を死亡の時における同族理事(被相続人を含む)の数で除して計算した金額に相当する金額を、被相続人から遺贈により取得したものとみなして、当該特定一般社団法人等に相続税が課されます。
- 相続開始の直前における同族理事数の総理事数に占める割合が2分の1を超えること。
- 相続開始前5年以内において、同族理事数の総理事数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。
(注)平成30年4月1日以降の特定一般社団法人等の理事の死亡に係る相続より適用されます。ただし、経過措置があります。
具体例
一般社団法人の理事長が亡くなりました。相続開始時の当該一般社団法人の純資産額は1億円で、相続開始前の理事数は、被相続人の他、被相続人の長男の2名でした。
この一般社団法人が理事長の死亡により取得したものとみなされる課税遺産額はいくらでしょうか?
1億円(相続開始時純資産額)÷ 2名(相続開始時の同族理事の数+被相続人)=5千万円
留意点
- 純資産額は相続税法上の時価により評価する
- 含み益に対する法人税相当額は資産から控除できない
- 死亡による退職金支給額は債務として資産から控除できる
- 基金の額は債務として資産から控除できる
- 特定一般社団法人等に係る相続税は2割加算となる