オリオン税理士法人
不動産関連

収用等に係る代替資産取得の課税の繰延べ(修正版)


こちらの記事は、2020年10月5日掲載の記事https://orion-tax.cocolog-nifty.com/blog/2020/10/post-ed2066.html

について、読者からのご指摘により、修正したものです。

収用等により、対価補償金等の交付を受けた場合、対価補償金等で代替資産を取得する場合の課税の特例(措法33)や、特別控除の特例(5,000万円特別控除)(措法33の4)があります。

今回は、対価補償金等で代替資産を取得した場合の課税の特例について確認しようと思います。

【事例】

  • Aは所有する自宅(土地・家屋)を、道路拡幅工事のため土地収用法により1.2億円(土地対価補償1億、建物移転補償2千万)を受けた
  • Aは対価補償等により代替資産として自宅6千万円(土地4千万、建物2千万)を購入した
  • Aは、同居していた親族のため代替資産として別宅6千万円(土地4千万、建物2千万)を購入した
  • Aの、収用前の自宅については、取得費が不明である

【代替資産取得による課税の繰延べ】

収用等の対価補償等で代替資産を取得する場合、1.補償金等の額が代替資産の取得価額以下であるときは、その譲渡した資産の譲渡が無かったものとされます。2.その補償金等の額が、代替資産の取得価額を超えるときは、その超える部分に相当する部分の譲渡があったものとして、譲渡所得の計算を行います。

  1. 補償金等 ≦ 代替資産の取得価額 ∴譲渡が無かったとみなす
  2. 補償金等 > 代替資産の取得価額 ∴代替資産を超過する部分は譲渡所得があったとみなす

【代替資産の範囲】

代替資産については、下記のような取扱いがあります。

  • 同種の資産(個別法)措令22④

収用等された資産と代替資産が同種の資産であること。そのため、土地や土地の上に存する権利(借地権等)の収用により代替資産として土地等を購入する場合や、建物の収用により、建物を購入する場合には代替資産として認めれれています。

本事例の場合には、個別法を採用すると下記表のように、収用等された土地1億と代替資産として購入した土地8千万円の差額の2千万円が課税対象となります。建物については、収用等された建物2千万円に対して、代替資産として購入した建物が4千万円となり、代替資産の取得価額の方が過大となるため課税されないことになります。

  • 一組の資産(一組法)措令22⑤

収用等された資産が、異なる二以上の資産で一の効用を有する一組の資産となっているもの、例えば居住用の土地・建物であれば、その効用と同様の効用を有する資産を代替資産とすることが可能となります。

本事例の場合には、一組法を採用すると下記表のように、収用等されたAの居住用の土地・建物1.2億円にたいして、Aの居住用としての土地・建物は6千万円となることから、差額の6千万が課税対象となってしまいます。A親族の居住用についてはAからの使用貸借の土地・建物であり一組法の要件である、「一の効用を有する一組の資産」の要件を満たさないことから課税の繰延べをすることができません。また、特別控除の特例(措法33の4)との併用も出来ないことから通常通り課税されてしまいます。

  • 個別法と一組法の併用

個別法と一組法は併用することも可能となります。本事例においては、A居住用の土地・建物について一組法を採用して、土地の対価補償からまずは控除します。その上で、A親族居住用の土地・建物について個別法を採用することで課税所得はゼロになります。

個別法と一組法の併用については国税庁HPを参照ください。★https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/14/21.htm

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/14/20.htm

なお、法令上は、一つの譲渡に対して一組法と個別法を併用できるかについては明らかになっていないように思われますが上記国税庁の★リンクにあるように認められているものと思料します。また、一組法においては措法通達33-39にあるように、代替資産については必ずしも一組の資産になっていることは要件ではないことから(例、居住用の土地建物が収用等された者が、自身の保有する他の土地に建物を建てた場合の建物のみをもって当該土地家屋の代替資産とすることができる)、個別法とは異なり、対価補償等を必ずしも土地と建物の内訳に分類する必要性はないものと思われます。その場合、上記事例においては、一組法では土地の対価補償(100,000)から先にA居住用の土地建物(❷60,000)を代替資産として控除し、その上で個別法を利用してAの親族居住用の代替資産についても買換え特例が利用できるものと思われます。

【所得税等の計算】

 個別法と一組法の併用をした場合は、課税所得がゼロになることから所得税等は課されません。

 

【参考】

 収用等の特別控除を採用した場合の所得税・住民税の計算は下記のとおりとなります。なお、詳細な課税所得等の計算については割愛し、税率は所得税・住民税合わせて20%とします。

 (課税対象1.2億円 - 取得費600万円 - 特別控除5,000万円)× 20% =1,280万円

ただし、対価補償金等で代替資産を取得する場合の課税の特例(措法33)を利用して課税を繰延べした場合には、将来、当該代替資産を譲渡する際の課税負担額が、収用等の特別控除を採用した場合に比べて税負担額が大きくなる可能性が高いので、トータルの税務コンサルを受けた上で何れを選択するか判断することをお勧めします。

なお、上記は、私見になりますので、確定申告等を実施する場合には税理士等の専門家にご相談のうえ実施してください。

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