オリオン税理士法人
所得税

ふるさと納税 住民税特例分の注意点


ふるさと納税は平成20年度より創設された制度になります。
平成26年度までは寄附件数は低調だったものの、平成27年度には寄附金額が初めて1,000億円を超える
約1,600億円となり、直近の令和3年度の寄附金額は約8,302億円と多くの方が利用している制度になります。
しかし、ふるさと納税を実施している住民が多い市区町村では、住民税の流出にもつながり、
神奈川県横浜市においては令和4年度の住民税が約23億円流出する形となっているそうです。
そんなふるさと納税ですが、寄附金控除の適用を受けることができることについては
多くの方がご存じのことかと思いますが、住民税の控除部分には注意が必要となる場合があります。

ふるさと納税における寄附金控除の金額ですが、所得税と住民税の両方で適用をすることができ、
次の1から3の金額の合計が控除金額となります。
 1.所得税からの控除
 2.住民税からの控除(基本分)
 3.住民税からの控除(特例分)

1の金額は (ふるさと納税額-2,000円)×所得税の税率
2の金額は (ふるさと納税額-2,000円)×10%
3の金額は (ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%-所得税の税率)
により計算がされ、
「×」記号の右の数字を足し合わせると100%になり、自己負担分が2,000円になるようになっています。
しかし、1での所得税の税率と3での所得税の税率は場合によっては異なることがあり、
異なっている場合は自己負担分が2,000円以上となってしまいます。

異なる理由としては、1での所得税の税率は≪所得税の課税所得に対応した所得税の税率(以下、A)≫を
指し、2での所得税の税率は≪住民税の課税所得に対応した所得税の税率(以下、B)≫を指しているためです。
これにより、次のような場合には自己負担分が2,000円以上となってしまいます。
 例 Aの金額:880万、Bの金額:910万、寄附金額30万の場合
    1.の金額:(300,000-2,000)×23%=68,540
    2.の金額:(300,000-2,000)×10%=29,800
    3.の金額:(300,000-2,000)×(100%-10%-33%)=169,860
    控除額合計:268,200
    自己負担分:300,000-268,200=31,800

AとBの違いは、所得税と住民税の課税所得の計算方法で下記の違いがあるため発生するものと考えます。
 ・寄附金控除が所得控除であるかないか
  所得税の計算では所得控除ですが、住民税の計算では税額控除のため、
  課税所得にふるさと納税分の差が生じてしまう。
 ・生命保険料控除、地震保険料控除の控除額計算
現在、寄附金限度額の計算ができるツールが多くありますが、
この違いに対応している様子はありませんでしたので、年末に向けて限度額を計算する方は注意が必要です。

y.s

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