相続税の申告を行うと、税務調査がくる場合があります。統計的には税務調査は申告を行うと1割から2割程度の確率で行われるといわれますが、申告内容に疑義がある場合や金額が大きい場合には、調査の対象となる可能性が高いと思われます。またそもそも申告を行っていない無申告事案の税務調査は件数自体は多くないものの、調査事案の平均課税価格が1億円以下であるため、超富裕層でなかったとしても税務調査の対象とされています。
通常の場合、調査は事前連絡のうえ行われ、また丁寧な対応がなされるようになっているため、その意味で恐れることはなくなってきています。しかし、調査がなされるとおよそ8割のケースで追加の税負担が生じますので、今でも慎重な対応が必要であることに変わりはありません。
調査で指摘されやすい財産
調査で見つかった申告漏れの個別財産としては、金額の構成比に基づくと次のような順となっております。
- 現金・預貯金等
- 土地・家屋
- 有価証券
現金・預貯金等が最上位となるのは、隠しているケースのみならず、「名義預金」が多くを占めているものといわれます。「名義預金」とは、形式的には家族の名義であるものの、実質的には亡くなった方の財産とされる預金をいい、相続税の計算上は、相続財産に含まれるものとなります。夫の収入の一部を生活費のため作られた妻名義の預金口座や、祖父母が贈与した“つもり”となっている孫名義の預金口座も名義預金に該当します。名義預金とみなされないためにも、贈与した場合は、贈与契約書の作成や、銀行印・通帳の管理は受贈者(受贈者が未成年の場合にはその親権者)がするようにしましょう。
ペナルティ
調査で追加の税負担が生じる場合には、本税となる相続税以外に別途、ペナルティの税金が課せられます。なお、あまりにも悪質で高額な事案の場合には刑事事件として告発されることもあります。一般的なペナルティについては次のとおりです。
内容 | 追加本税に乗じる税率 |
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①延滞税 法定納期限までに納付しなかった場合に課税 | 納期限から <2ヶ月以内> 原則年7.3%(3%前後) <2ヶ月経過後> 原則年14.6%(9%程度) |
②過少申告加算税 | 期限内に申告した後、修正申告等により追加納税が生じた場合に課税 原則10%または15% |
③重加算税 | 仮装・隠ぺいにより申告している場合に過少申告加算税等に代えて課税 原則35%(無申告のときは40%) |
④無申告加算税 | 期限内に確定申告書の提出がない場合で、納付すべき税額があった場合 原則15% |