オリオン税理士法人
不動産の生前対策ケーススタディ

国外中古建物を利用した節税対策


概要

これまで国外中古建物を利用した節税対策が一部の富裕層に利用されてきました。西欧では、建物の法定耐用年数を経過した場合でも、市場価値はそれほど目減りしません。その一方で、日本の税制では木造であれば耐用年数が22年であり、仮に耐用年数を全部経過した建物を購入した場合は簡便法により4年
(法定耐用年数22年×0.2=4.4年端数切捨て)で減価償却することが可能となります。当該仕組みを利用して、海外中古不動産を購入し、不動産収入に対して建物の減価償却を短年度で過大に取り不動産所得の損失をつくり、給与所得等の他の所得と損益通算することで節税を図ってきました。これに対して、令和2年の税制改正により、令和3年1月1日以後は、国外中古建物から生じる不動産所得を有する場合で、当該不動産の償却費に相当する金額により損失が生じた場合は、当該損失が生じなかったものとみなされることとなりました。


ケーススタディ

Q.

Aさんは、国外中古アパートを5千万円(土地2千万円、建物3千万円)で購入しました。その後、5年後に同額の5千万円で売却しました。改正前と改正後では不動産所得と譲渡所得の計算はどのようになるでしょうか?

A.

No不動産所得改正前改正後備考
家賃収入1,0001,000
その他経費▲200▲200
減価償却費▲3,000▲800差額2,200万円は償却不可
不動産所得(①-②-③)▲2,2000改正により損失はなし
給与所得3,0003,000
課税所得(④-⑤)損益通算8003,000改正前は損益通算可能
No譲渡所得改正前改正後備考
譲渡収入5,0005,000
建物取得費3,0003,000償却費分建物取得費が減額
減価償却累計額3,000800
土地取得費▲2,000▲2,000
譲渡所得(①-②+③-④)3,000800改正により譲渡所得は減額

(注)改正により不動産所得に係る減価償却費から生じる損失はなかったものとされるものの、不動産を譲渡する際の取得費の減価償却累計額が少なくなることで譲渡所得は圧縮されることとなります。なお、当該改正は個人所得税についてのみで、法人による国外不動産については改正されておりません。

お使いのブラウザーはこのサイトの表示に対応していません。より安全な最新のブラウザーをご利用ください。