概要
譲渡所得の計算は、土地や建物の売却代金から取得費や譲渡費用を差引いて計算しますが、建物は時の経過に応じて経年劣化していくことから、購入代金がそのまま取得費になるわけではありません。建物については、購入代金の合計額から所有期間に応じて減価償却費相当額を差し引く必要があります。
なお、言葉の定義として、購入時の価額は「取得価額」とし、売却時の減価償却費の調整を加えた価額を「取得費」として使い分けています。
減価償却費の計算
償却方法は、複数の計算方法がありますが、建物の法定償却方法は定額法のため、定額法について解説します。なお、定額法のうち、事業用建物については、平成19年4月1日以降に取得した場合の計算方法により解説しています。
建物 | 事業用 | 非業務用(居住用等) |
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計算方法 | •建物の取得価額×償却率×経過年数 | •建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数 |
特徴 | •1円まで減価償却する •毎年の減価償却費を必要経費としない場合も強制償却により経過年数相当の減価償却費を控除して取得費を計算する •国外中古資産については減価償却費の調整あり | •建物の取得価額の95%まで減価償却する •非業務用建物の耐用年数は事業用の1.5倍(1年未満切捨て)に対応する旧定額法の償却率で計算する •経過年数の端数が6か月以上の場合は1年とし、6か月未満の場合は切捨てる) |
非業務用建物の償却率
区分 | 木造 | 木骨モルタル | (鉄骨)鉄筋コンクリート | 金属造① | 金属造② |
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償却率 | 0.031 | 0.034 | 0.015 | 0.036 | 0.025 |
金属造①:軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3ミリメートル以下の建物
金属造②:軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3ミリメートル超4ミリメートル以下の建物
計算事例
Q.
Aさんは、平成2 0 年( 2 0 0 8年)7月に居住用建物(木造)を3, 0 0 0 万円で購入し、令和7年(2 0 2 5年)5月に売却しました。譲渡所得の計算を行う際の、建物の取得費はいくらになるでしょうか。
A.
1.経過年数 | 16年10月(2008/7-2025/5) ∴ 経過年数17年(6か月以上は切上) |
2.建物用途 | 居住用 |
3.構造/償却率 | 木造 / 0.031 |
4.減価償却累計額 | 3,000万円×0.9×0.031×17年=14,229,000円 |
5.譲渡時の取得費 | 3,000万円-④=15,771,000円 |