概要
自宅を売却し譲渡所得が生じた場合、一定の要件を満たすことで、3,000万円特別控除や軽減税率の特例を受けることができます。
特別控除
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-3,000万円
軽減税率の特例
居住用財産 | 10年超所有 | 10年以下所有 |
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軽減税率 | ①譲渡所得が6,000万円以下の部分 譲渡所得×14%〔14.21%〕 (所得税10%〔10.21%〕。住民税4%) ②譲渡所得が6,000万円超の部分 (譲渡所得-6,000万円)×20% 〔20.315%〕 (所得税15%〔15.315%〕、住民税5%) ③税負担=①+② | 軽減税率の特例なし 5年超 20%〔20.315%〕 (所得税15%〔15.315%〕、住民税5%) 5年以下 39%〔39.63%〕 (所得税30%〔30.63%〕、住民税9%) |
(注)特別控除の特例と軽減税率の併用は可能ですが、これらの特例と買換特例の重複適用はできません。
適用要件
下記チェック項目それぞれYesであれば、当該特例の対象になります。
譲渡不動産の要件
- 居住していた家屋(2つ以上、居住用の家屋がある場合には、主として居住している1か所のみが特例の対象となる)の売却である
- 居住の用に供さなくなった日から3年経過する日の属する年の12月31日までの間に売却している
- 居住用家屋の敷地を売却する場合は、家屋とともに売却している
- 災害により家屋が滅失している場合は、その敷地を2.の期間内に売却している
- 居住の用に供していた家屋を取壊した場合には、家屋を取壊してから1年以内にその敷地の売却に関する契約が締結され、かつその敷地を2.の期間内に売却している(ただし、取壊し後、敷地を売却するまでの間賃貸した場合は不可)
期間
【A】3,000万円特別控除の場合:所有期間に制限なし
【B】軽減税率の特例の場合:譲渡した年の1月1日において、家屋と敷地の所有期間がともに10年超である
留意事項
- 売却相手が配偶者や親・子など直系血族、生計を一にする親族、同族会社等でない
- 共有の居住用財産を売却した場合は、共有者の持分の範囲においてそれぞれ適用する
- 譲渡した年の前3年の間に住宅借入金特別控除の特例を受けていない
- 【A】3,000万円特別控除の場合:当該控除適用の前年、前々年に本特例や自宅の買換特例、自宅の売却損失の特例、自宅の買換え損失等の特例を受けていない
【B】軽減税率の特例:当該軽減税率適用の前年、前々年に本特例を受けていない - 3,000万円特別控除と軽減税率の特例は併用可能
軽減税率における所有期間のイメージ図
計算事例
Q.
Aさんは、居住していた自宅の敷地と家屋を、令和6年10月に7,000万円で売却しました。この土地と家屋は、15年前に3,000万円で購入(減価償却調整後2,500万円)したもので、売却するまで自分で住んでいました。また、この土地と家屋を売却する際に、仲介手数料1,470,000円と売買契約書貼付の収入印紙代30,000円(合計150万円)の譲渡費用がかかりました。なお、給与所得等の他の所得については考慮しません。
A.
項目 | 判定・計算 |
---|---|
1.家屋の判定 ※居住の用に供していた家屋 | 3,000万円特別控除の対象 |
2.所有期間の判定 | 15年>10年超 判定:軽減税率の対象 |
3.取得費の計算 | 7,000万円×5%=350万円<2,500万円 判定:2,500万円を選択 |
4.譲渡所得 | 7,000万円-(2,500万円+150万円)-3,000万円=1,350万円 |
5.税率の判定 | 譲渡所得1,350万円≦6,000万円 判定:14.21%(所得税10.21%、住民税4%) |
6.税額計算 | 1,350万円×14.21%=191.83万円 (百円未満切捨て) |
確定申告添付書類
確定申告に必要な書類です。
申告添付書類
- 契約日前における住民票の住所と売却した資産の所在地が異なる場合は戸籍の附票等で居住していたことを証明するもの※
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
(国税庁HPより入手可能) - 売却時の売買契約書写し
- 取得時の売買契約書等、取得額が把握できるもの
- 譲渡費用の領収書等(司法書士報酬、仲介手数料、印紙代等)
- 譲渡所得のチェックシート(国税庁HPより入手可能)
- 売却した不動産の登記事項証明書
※マイナンバー制度の導入により、平成28年分以降の確定申告から住民票の写しの提出は必要なくなりました。