オリオン税理士法人
不動産の相続・贈与

贈与税の計算概要


贈与税の二つの種類

贈与税には暦年課税相続時精算課税の二つの課税方式があります。高額の贈与を行う場合には相続時精算課税贈与の方が贈与税の観点からは有利ですが、その後に受ける贈与につき暦年課税に変更できないこと、相続時において相続財産に含めて計算がなされることから慎重な判断が必要です。

暦年課税相続時精算課税
対象相続時精算課税贈与以外の全て20歳以上(令和4年4月1日より18歳以上)の者が60歳以上※の祖父母や親から受ける贈与のうち選択したもの(その後の同一の贈与者からの贈与につき暦年課税への変更不可)
基礎控除110万円110万円
令和6年1月1日以後の贈与につき年110万円の基礎控除
特別控除贈与者ごとに累計2,500万円(前年以前に既に適用した金額がある場合にはその残額)
非課税枠配偶者控除や直系尊属からの住宅取得資金贈与等直系尊属からの住宅取得資金贈与等
税率10%~55%一律20%
計算式(贈与財産-特別控除-110万円)×税率-税額控除(贈与財産-特別控除)×20%
贈与者の相続発生時3年内贈与を相続財産に加算
改正により7年内贈与を加算することになるが、令和
8年12月31日以前の相続開始については影響を受
けない
相続財産に加算して相続税を計算

住宅取得資金贈与の非課税措置については「60歳以上」の要件はない。


暦年贈与の税額計算

暦年課税の贈与税は、贈与者が誰であれ受贈者が贈与を受けた金額の1年間の合計額に基づき計算されます(精算課税贈与の対象とされるものを除く)。この場合、税額は特例贈与と一般贈与の大きく2種類に分けられており、特例贈与の方が税負担が軽減されています。

特例贈与20歳以上の者がその直系尊属から受ける贈与
(Ex.親や祖父母から子への贈与)
一般贈与特例贈与以外の贈与
(Ex.配偶者、兄弟、未成年者等への贈与)

特例贈与の税率表

基礎控除後の課税価格税率税額控除
200万以下10%
400万以下15%10万
600万以下20%30万
1,000万以下30%90万
1,500万以下40%190万
3,000万以下45%265万
4,500万以下50%415万
4,500万超55%640万

一般贈与の税率表

基礎控除後の課税価格税率税額控除
200万以下10%
300万以下15%10万
400万以下20%25万
600万以下30%65万
1,000万以下40%125万
1,500万以下45%175万
3,000万以下50%250万
3,000万超55%400万

計算事例

Q.

Aさんは、両親から令和6年8月に、所有する賃貸アパートのリフォーム代として各500万円ずつ(計1,000万円)贈与を受けました。Aさんが所有するアパートは、その前年に父親から相続時精算課税により贈与(課税価格2,400万円)を受けたものでした。

Aさんの令和6年の贈与税額は、いくらになるでしょうか?
ちなみに、Aさんは母親からの贈与は暦年課税により申告する予定です。

A.

(1)父親からの贈与税額
➀課税方式の選択相続時精算課税
(一度、精算課税を選択すると、当該贈与者からの以後の贈与は全て精算課税を選択する必要がある)
②特別控除の額2,500万円ー2,400万円=100万円
③税額計算(500万円ー100万円)×20%=80万円
(2)母親からの贈与税額
➀課税方式の選択暦年贈与の特例贈与
(直系尊属からの贈与に該当するため、税率の低い特例贈与に該当する)
②税額計算(500万円-110万円)×15%-10万円=48.5万円
(3)合計贈与税額(1)+(2)=128.5万円

贈与者の相続発生時の取扱い

贈与者が亡くなった場合、贈与済の財産は本来被相続人の財産でないことから、民法上の遺産分割や相続税法上の相続財産の対象外になります。しかしながら、法定相続人に対する一定の生前贈与については、それぞれ相続財産に持戻しをする必要があります。それぞれの特徴をとらえ、手続する際には注意してください。

民法

特別受益

被相続人の生前に、被相続人から学費や生活費、結婚費用等で特別に財産を付与されていた者がいた場合に、他の相続人との不公正を是正するために、当該財産を相続財産に持戻しした上で、各相続人への相続財産を確定させる規定です。民法改正により、令和元年7月より相続人に対する特別受益は原則相続開始前10年間になされた贈与に限定されます。

相続税法

3年以内贈与加算

法定相続人のうち、被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときには基礎控除以下の贈与であったとしても、被相続人の遺産額に受贈財産を贈与時の価額で加算する制度です。その場合、贈与時に贈与税を支払っていれば、相続税の計算上、当該贈与税を控除することができます。ただし、住宅取得資金贈与や配偶者控除等の特別控除額による非課税部分については、3年以内贈与であっても加算する必要はありません。

令和5年度の税制改正により、7年以内贈与加算になりましたが、令和8年12月31日以前の相続開始については3年以内贈与加算のままで影響を受けません。

相続時精算課税贈与

相続時精算課税による贈与をしていた者が亡くなった場合には、生前に贈与を受けていた財産について、贈与時の価額で相続財産に加算する必要があります。ただし、既に納めた贈与税が相続税を上回る場合には、超過した金額の還付を受けることができます。

令和5年度税制改正により、令和6年1月1日以後の贈与については、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除ができたことから、基礎控除を下回る贈与の場合には、贈与税申告及び相続財産への持ち戻しが不要となりました。

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